占いが生み出す、人間ドラマ

|占い&BAR Karma by妖子

2017年、ニシタチの老舗占いバーが閉店した。今回取材した「占い&BAR Karma by妖子」は、それとほぼ同じタイミングで開店。「たまたまなんですけど、驚くほど同じタイミングだったので勝手に意志を引き継いでいるつもりでやっています」と話すのは、この店のオーナー、占い師の岩切たけるさん。今回は、スナックとしてのDNAもある同店で、たけるさんが占いと出会ったエピソードや、占いバーを始めるきっかけ、さらに“占いバーあるある話”までたっぷりと伺った。

手相占いって、もしかして需要あるかも

以前は、3000円飲み放題のいわゆる普通のボーイズバーで働いていたたけるさん。あるとき、サービスの一環として手相占いを始めると、売り上げが驚くほど伸びたという。手相占いは意外と需要があるのかもしれないと思い、それなら占いとバーで1店舗やってみようとお店を開いた。「お恥ずかしながら、占いが好きでカルマを作ったわけではないんですよね」と、少し気まずそうに笑った姿が印象的だ。

夜の世界に入ったのは、お母様の影響?

お母様と共同で「スナック妖子」というお店をしていたときもあったが、そこはカラオケが付いており、静かに占える環境ではなかった。二人でお店をしていた時には、親子でぶつかることも多かった。

「スナック妖子の席数は30くらいでしたかね。ありがたいことに当時もたくさんのお客さんに恵まれていて、母のお客さんと、僕のお客さんで入りきらないという事が多々ありました。母のお客さんは、どちらかといえばゆっくり飲みたい方がメイン。一方僕のお客さんは、当時僕が20歳くらいだったのもあり、めちゃめちゃ騒いでいました。共存は難しいですよね」

お母様もスナックで働いていたと聞き、その影響で夜の世界に足を踏み入れたのかと問うと、たけるさんはきっぱり否定。「それよく言われるんですよ。僕がオーストラリアから帰ってきた年に母はお店を始めました。なので、半年くらい母が早い感じですかね。僕たちはどちらも夜の経験がないままスタートしました」

会話の流れから、「オーストラリアには何をしに?」と何気なく投げかけた質問の回答である。たけるさんは少しの間を置き、こう続けた。「血が繋がっていない僕の叔父がオーストラリアにいるので、最後にそこに行って死のうと」

たけるさんは宮崎北高校に進学後、「大学に行くのが当たり前」という空気感に日々悩まされた。「当時の僕はどうしても勉強が嫌いで、というか全然できなくて。今で言うところのADHDなのですが、当時はそんな言葉もありませんでした」

悩みの答えを手相に求めた

たけるさんは大学受験を断念し、飲食店で働き始める。そこでの経験が、手相占いを始める大きなきっかけとなる。

「働き始めたはいいものの、職場のお局さん3人と店長に嫌われてしまって。でも、どうして嫌われるのか当時の僕は全くわからないんです。そこで、手相の本を読み始めました。自分が悪いと思わないからこそ、手相に答えを求めたんでしょうね」

高校時代にハマっていたモバゲーの中に、島田秀平さんの手相占いのコーナーがあった。そのときに見つけた「神秘十字線」という手相が、当時のたけるさんに一致。完全に当てはまっていた衝撃が、彼を手相占いの世界へと連れ込む。

「最初は趣味の範囲で手相占いの勉強を始めました。そんなある日、まじまじと自分の手相を見ていると『KY線』があったんです。それでやっと、自分がKYなのだと気づきました。職場の人たちに嫌われてしまったのも、これが原因ではないかと。それから、人の話をしっかりと聞くことを意識するようにすると、少しずつ人に好かれるようになっていきました」

たけるさん曰く、「KY線」がある人は、社交性や自律性、いろんなところに飛び込んでいけるような素質を含んでいるという。手相占いが、人とコミュニケーションを取る上での自信をくれた。

やりすぎなくらいの占い

占いには大きく分けて3つの種類がある。

・命術…生年月日を用い、生まれた時に定められた普遍的な情報をもとにする占い

・卜術…タロットカードなどを用い、偶然に必然性を見出す占い

・性術…手相などを用い、ものの形から占う

と聞いても、なかなかその違いを理解するのは難しい。たけるさんはマップに例えて、この3種について教えてくれた。

「手相占いは結構アバウトなので、正直限界があります。例えば、『運気が上がるのが何歳か』は占えません。手相占いと生年月日占いだと、ざっくりしたマップを見ている感じ。おおよその位置を特定するのに使うイメージです。そこから、マップを拡大していく役割がタロットカードですね。『じゃあ細かく見ていきましょう』と使います。うちの店ではこの3種類全部使えるのですが、正直ここまでのクオリティーを維持している占いバーはほとんどないですね。お客さんにもやりすぎだと言われます(笑)」

男女で違う、占いバーあれこれ

開店して5年、お客さんの8割は女性だ。定期的に通う人も多い。占いを通じて様々な人の本音に触れてきたたけるさんだからこそ知る、“占いバーあるある”を聞いてみた。

「正直、浮気や不倫の話は当たり前です。例えば、『彼氏とは続いているんだけど、それ以外の今気になっている人との相性を占ってほしい』とか。別れる前に次を占ってくれっていうパターンは多いですね。それと、キャバクラで働いている方とアフターで来るとき、同伴される男性には覚悟して来ていただきたいです。占いバーだと間が持つと思って選んでくださっていると思うのですが、占いってちゃんと出ますからね。『この人は本命じゃない』って(笑)」

最近は、ビシネス系の占いを求められることもあるのだそう。この事業は成功するか、どちらに投資すべきか、など占うにはやや難しそうな気もするが…。

「ビジネス系の占いをご希望の男性もかなりご来店くださいます。でも、男性ってそもそも占いが得意でない人が多いんですよね。自分の人生は自分で決めたいのか、人の話を聞かない方も(笑)。占いには、上手くいっている人の方が来てくれますね。でもこれは、よくよく考えれば当たり前のことで、占いでさえちゃんと聞ける、人の話を聞くことができる方は、やっぱりビジネスも成功しています」

この店を占い師の登竜門へ

彼と会話をしていると、なにか見透かされているのではないかという気持ちになる。ミステリアスでどこか掴めないたけるさんと「占い&BAR Karma by妖子」は、これからどこに向かっていくのだろうか。

「これからKarmaは、占い師の登竜門にしていきたいです。ここ数年、昔は無かった自分の承認欲求が出てきて、YouTubeで占いに関する発信をしています。弟子というか、下を育てていくことが大切なのかなと思うようになりました。この店は有難いことに、お客様が来てくれる状況なので、それを活かして占い師としての技術や接客を身につけられる場所にしたいです。占いを勉強したい方や手に職をつけたい方におすすめですよ」

たけるさんの独特の間合いに時々吸い込まれそうになりながら進んだインタビューではあったが、占い師としてだけでなく、たくさんの苦労をしてきたからこその言葉には、どこか重みがあった。占いバーに行くことのハードルは、他のスナックよりも高いのかもしれない。でも大丈夫、占いはコミュニケーションのひとつなのである。スナックのドアを開けるのと同じように、「占い&BAR Karma by妖子」に足を運んでみてほしい。

取材=恒吉浩之、原稿執筆=いちたになな、撮影=田村昌士

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Data

岩切たける

最近のブームはキャンプ。ファミリーキャンプやグルキャンまで、複数人で楽しむのが好き。それと子どもに顔を「ぱちぱち」されるのも(笑)

住所
宮崎市中央通1-10
第1ビル1階
電話
050-5280-7489
営業時間
◎火曜13時~19時、20時~翌2時 ◎水~日曜、祝日、祝前日: 13時~19時、20時~翌3時
定休日
月曜日
喫煙
ng
席数
13席
料金体系
《飲み放題(90分)+占い(10分)》
女性:3300円(税込)/男性:3850円(税込)
※占いの追加は10分1100円(税込)で可能
軽食
決済方法
現金、クレジットカード
Webサイト・SNS
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