話し上手、聞き上手、場回し上手のママと楽しい時間を

|スナック 環

当時42歳の環ママが店を開くまで

ママやマスター、時には隣の客との“対話”こそ、スナックの醍醐味と言ってもいいかもしれない。幾多の店が入居する、西橘通沿いの三輪ビル。ここの3階にある「環」は、そんなスナックにおける対話の面白さをとくと味わうことができる場所だ。

店を切り盛りするのは、気立てよく、暖かい表情の中にも、凛とした雰囲気のある井上環ママ。現えびの市の大河平(おこびら)生まれだが、父は転勤族で、3年おきに都城、日向、串間、延岡など県内各地を転々とした。

大人になって飲食に携わる仕事もしたそうだが、自分で店を持った理由を聞くと、「まぁ、いろいろあってね」と前置きをした上で、こう話を続ける。

「お店を始めることになったのは、2度目の離婚の後。1999年の夏、当時私は42歳。子どもも二人いたし、とにかく日銭を稼がないといけなかったから、昼間の仕事を探していたんだけど、なかなか見つからなくて困っていた時に、友人から『スナックで働いてみたら』と提案されて。その時はスナックがどんな形態の店かもろくに分かっていなくて、おまけに働き始めた店のママが24歳。ママからすれば、生意気だったのでしょう。1カ月でクビ。結局自分で店を出すことにしました」

対話を楽しむのが、スナック環のスタイル

環ママが店を開いて、約21年。長く店をやる中で、環ママは「いろいろな人とお会いできたのが財産」と話す。

「客層もだいぶ変わったと思います。昔は接待で来られる方や、情報交換の場所としてビジネスで使われる方も多かったですけど、こう何年も店をやっていると、私と一緒にお客さまも年々歳を重ねていくでしょう。以前の常連さんが今は奥様を連れて二人でいらっしゃることもよくあります」

ただ、客層は変われど環ママの接客スタイルは変わっていない。それが「対話を楽しむ」ということだ。

「スナックっていう場所は不特定多数の、知らない人同士が楽しくお話をするところ。私も店を出した当時からそんな空間にしたいと思ってましたから、近くに座っている人たちをどんどん会話に入れて、みんなでお酒を飲むのが環のスタイルなんです」

そんな環ママは、カウンター越しの会話だけでなく、その日初対面の隣の客も巻き込み、見事なグルーブ感を作る。「流石スナックのママだ…」と感心していると、実は驚きの事実が。なんと環ママ、以前は地元の放送局でラジオ番組を持っていたのだそう。

「ゲストを呼んでのトーク番組も9年間やってました。お酒を飲みながらいろんな人とお話をして…結局200人くらいの方とお会いしたのかな。自分がやりたいことを楽しくやっていました」

ママの特製お通しプレートが会話に華を添える

話し上手で聞き上手、場回しも上手い環ママだが、そんな店での対話にエッセンスを加えてくれるのが、ママが作ってくれる素敵なお通しの数々。以前は自家製の梅干しに果物、生ピーナツを自分で塩で炒ったものを出していたが、つい1年ほど前から「もっとお客さまが喜んでくれるにはどうすればいいだろう」と、お通しプレートを出すことにした。

この日はブロッコリーやカリフラワー、ミニトマトなどのピクルス、キョウイモとレンコンの辛子明太子和え、定番の梅干しに、おにぎり、漬物、そしてデザートは干し柿にラフランスまで。色鮮やかなプレートは見ているだけで気持ちが弾むし、「これは何?」と話のきっかけにもなる。

「お通しはできるだけ手作りで出しています。あと、珍しい食べ物を見つけるとつい買って出したくなるんですよね。酒盗とか、からすみとか、美味しそうなものを探すのが趣味みたいなものなんです」

ちなみに今後は、4人〜の予約制で前菜やメインなど食事もできる貸し切りメニューも検討しているのだそうだ。

美味しいお通しに、ママやお客さんとの楽しい会話。これぞTHE スナックの醍醐味。日本一のスナック街・ニシタチの王道スナックとして、筆者も太鼓判を押すのが、ここ「スナック 環」だ。

取材・執筆=田代くるみ、撮影=田村昌士

看板

Data

井上環

宮崎県えびの市出身
三線を始めて5〜6年。軽快な曲は苦手だけれど、先生の指導のもと練習中。小指の爪だけ赤く塗っているのは「話のきっかけになると思って」。

住所
宮崎県宮崎市橘通西3丁目8-5
三輪ビル3F
電話
0985-31-0778
営業時間
20:00~翌1時
定休日
日曜日
喫煙
ok
席数
カウンター=6席、ボックス=10名程度(新型コロナウイルスの状況を見て判断)
料金体系
2時間=3,000円〜。ボトルキープは2,500円〜
軽食
あり
決済方法
カード決済:可
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