母から娘たちへ ニシタチの伝説は続く

|スナック プチモナ

19歳からこの道一筋「スナック プチモナ」の茶圓美保ママ。実は彼女、以前スナックアドバイザーでも紹介したニシタチのレジェンド、華酔亭のイツ子ママの娘さんである。学生時代を東京で過ごし、エステティシャンを目指していたというママが、この道に入るまでにどういった経緯があったのだろう? ブランデーやウィスキーの洒落たボトルで華やぐ店内、カウンターに腰掛け話を聞いてみると、その波乱万丈な人生について、学生時代まで遡り話してくれた。

保育士になるはずだった? ママの学生時代

「元々は保育士になる予定でピアノを習っていたのですが、ちょうどその頃、青山に日本初のエステティシャンの学校ができたんです。高校を出てその学校の試験にも受かったのですが、入学金が100万円必要で…20歳までは入学できるということだったので、自力で貯めようと思い立ちました。そこで知り合いだった鹿児島の企業の社長さんが、敷金礼金なしで、家賃だけでいいから調布の物件で店をやってみないか? と持ちかけてくださったんです。ボックス20席と、カウンター7席ほどの小さなスナックだったのですが、友人たちが手伝ってくれて、とても繁盛しました」

それからなんと1年で、目標額を上回る150万円を貯めたという美保ママ。店の経営も軌道に乗り、楽しくなってきたところで、予想だにしないアクシンデントに見舞われてしまいます。

「ある日、新宿駅西口の階段を踏み外して、階段落ちのように落ちてしまって…自力で自宅に帰れはしたのですが、出血があったり高熱が出たりして途方に暮れていたんです。そしたら先に宮崎に戻っていた母から、たまたま電話がかかってきて。そのことを話したら、その日のうちに東京まで会いにきて『美保ちゃん、もう置いていけないから、店閉めて帰るわよ』って。それで私も一緒に宮崎に帰ることになったんです」

当時から料理が好きだった美保ママは、イツ子ママが経営していた店でも、軽食の調理を手伝うなどしていた。イツ子ママの店も地元の暖かな客ばかりで、嫌な思いをすることはなかったという。調布でのママデビューを経て、スナックの魅力に引き込まれていくことになる。

ニシタチでの新たな幕開け

「宮崎に戻ってしばらく、両親が新店舗を始めるときに、店舗の内装を私に全て任せてくれて。その頃はサーフィンをしてたから、サーフボードを飾ったりして、結構かっこいい店でしたよ。お店の名前も自分で決めなさいって言ってくれて…それで気づいたら私がママやっていいよってことに(笑)。『いらっしゃいませ』という名前で、ニシタチでスナックをオープンしました。そしたらまたすごく繁盛させてもらって…その店ではカラオケも置いてたんですけど、宮崎で3本の指に入るくらい曲を流してた店だったみたい」

スタッフは常時5名ほど。キッチンにも軽食担当が1人立ち、お店を回していた。デニムにTシャツというラフなスタイルで、若い人たちにも人気の店に。当時サントリーが販売していた「クラブハウス」というウィスキーを取り扱い始めると、売り上げも相当なものになり、卸元の社長が「ここがあの店です!」とサントリーの会長を連れて来店したこともあったのだそうだ。

波乱万丈人生は続く

「とはいえ、一から始めないといけないことだったから、街頭でチラシやティッシュを配ってみたり、宣伝のためにも色々とやってみていましたね。26歳で結婚した際に都城に引っ越して、旦那さんの仕事を手伝ったり、畑や田んぼもしていたから、子供をあぜ道に置いて田植えしたり…(笑)どちらかというと街で育ったのですが、いろんな経験をさせてもらいましたね。それからまあ色々あって…(笑)宮崎に戻って、自分で新たにお店を始めたんです」

3店舗めの店は「いらっしゃいませ美保」という名前でスタートし、またまた人気店舗に。「お店の女の子たちもすごくいい子達ばかりでよく働いてくれて…、とても活気のあるいい店でした」と、懐かしそうに当時を振り返る美保ママ。

現在の店は、元々は美保さんのお姉さんが作られたもの。カラオケもなく、伺った話に出てきたこれまでの店と比べても、とてもシックで落ち着きのある、ゆったりと会話を楽しみたくなる造りだ。

ママの人徳? スタッフにも客にも恵まれて

「今は私と娘と、あと2人のキャストさんが交代で入ってくれています。娘の明彩妃(あさひ)ちゃんが、本業の傍ら、水木金土と手伝ってくれていて。明彩妃ちゃんはイツ子ママに似て、本当に働き者なんです。それからうちのお客さんは本当に、心優しい方が多くて…カラオケもないから、会話をゆっくり楽しみにこられる方が多いんですよね。焼酎も25種類、他にもリクエストがあったり、1年に一回しか来ない方だとしても、また会えますように、という思いで、その方が頼まれるお酒は置いておくようにしています」

客はカップルや女性1人に家族づれまで様々。父と息子のニシタチデビューの場面に立ち会えるなど、1人1人の心の通じ合いに触れることができるのも、スナックの魅力なのだと美保ママは続ける。

「私が癒さなきゃいけないのに、私が癒されたり元気付けられたりする日もたくさんあります。19歳からこの世界にいますが、母がいい形でずっと頑張ってくれていたから、私たちにも帰ってくる場所があった。水商売というとちょっとイメージが悪い時代もあったけど、子どもが嫌な思いをしないように、お弁当もきっちり作るのよとか、参観日は一番最初に行くのよとか。母もそうしてくれていた。いつでも『堂々と頑張りなさい』と言ってくれるんです」

今では親子3代で、ニシタチの夜を明るく照らしている茶圓ファミリー。「華酔亭」、そして「スナック プチモナ」をはしごするだけでも、ニシタチの、そして彼女たちの魅力は十分に知ることができる。こんなご時世ではあるが、宮崎の郷土史の大きな文脈のひとつとも言えるスナックカルチャーを背負う彼女たちの店を、のぞきに出かけてみてはいかがだろう?

取材・執筆=倉本亜里沙、撮影=田村昌士

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Data

茶圓美保

宮崎県宮崎市出身。趣味は編み物や料理。
最近マイボールとマイシューズを作ってボーリング教室に行ったけど、グループで一番下手だったので、現在絶賛練習中。

住所
宮崎市中央通り7-27
宮崎ビル1階
電話
0985-29-0205
営業時間
20時〜翌1時
定休日
日曜
喫煙
ok
席数
カウンター=6席 ボックス=8席
料金体系
飲み放題1時間半3,500円
ボトルキープ焼酎2,500円〜ウィスキー4,000〜(セット料金3,000円、時間無制限)
軽食
なし
決済方法
現金・クレジットカード
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