一度行ったら忘れない、おでん食べ放題スナック

|おでんスナック きょうちゃん

扉を開けると。一面ピンクカラーの店内に、2人の若いマスター。さらになぜだか、おでんの素晴らしい出汁の香りまでが漂ってくる……。良い意味でスナックのイメージを全力で覆してくれる店が、2021年春、ここニシタチに誕生した。その名も、おでんスナック「きょうちゃん」である。

日本一のバーテンダーを目指して

店の誕生秘話を聞く前に、まずはこの店のストーリーを語る上で欠かせない登場人物を紹介したい。まずお一人が、オーナー兼マスターの粟戸稜大さんだ。幼い頃から転勤族だったという粟戸さん。中学・高校時代は宮崎で過ごし、15歳から飲食の世界へ。10代という若さで粟戸さんが抱いた夢が、「日本一のバーテンダーになる」ことだった。夢を追いかけ上京し、東京のいくつかのバーで必死に修業を積んだ。

「東京ではまず、最低限のルールやサービスをしっかり学ぶことができました。宮崎ってやっぱり“てげてげ”(宮崎弁で「適当」)なところがあるじゃないですか(笑)。そういうカッチリとした部分を東京で培えたことは、財産になったと思います。厳しい世界でしたから正直毎日大変でしたしね。でも、とにかく早く日本一になりたかった。休みの日もバーを掛け持ちして働いていました」

話の節々から、熱くて真面目な性格が溢れる粟戸さん。しかし、どうしてそこまで「日本一」にこだわるのだろうか。

「東京の友人が、15歳くらいからバーテンダーをしていて……まぁ、もちろん本当はダメなんですけどね(笑)。彼が1人で任されている店に飲みに行った時に『こんなにかっこいい同世代がいるのか』と衝撃を受けたんです。そのとき、僕もこの世界に進みたい、負けたくないと思いました」

24歳になり、宮崎に帰ってきた粟戸さんは、2017年の暮れに市内の若草通りで「BAR AWATO」を開くことになる。

「50歳になっても、俺は屋根に登るのか」

そしてもう一人、文字通りこの店の“看板”を背負うのが、店長であるきょうちゃんこと、永易恭之介さんだ。朗らかで、どこか陽気なキャラクターの永易さんは、小・中・高と宮崎で過ごし、学生時代は硬式テニスに打ち込んだ。そして、大学入学と同時に福岡へ生活の拠点を移した。

「自分で言うのもなんですけど、僕、テニスがめっちゃ上手かったんですよ(笑)。だから、高校も大学もテニスで進学して。だけど正直言うと、テニスがそんなに好きじゃなかったんです。案の定大学3年の時に燃え尽きてしまって、学校を中退しちゃうんです。福岡で飲食でバイトとかもしてたんですが、結局は宮崎に帰ってきて、建設業に就きました」

それから建設会社で営業や施工に励むが、新型コロナウイルスの流行は仕事にも影響を及ぼした。

「コロナの影響で営業が回れなくなって、施工メインの仕事になっていた。ダサい話だけど『50歳になっても屋根に登り続けるのは俺にはできない』と思ってしまって。そんな中で足を運んだ『BAR AWATO』で、粟戸さんがめちゃめちゃカッコよく見えたんです」

粟戸さんが若草通りにバーを開いて3年程経った頃、常連客だった永易さんが「自分も飲食店で独立したい」と相談を持ちかけたことが、すべてのはじまりだった。カウンター越しのバーテンダーに憧れた2人の男性が、夢を共有した瞬間であった。

なぜ今、おでんスナックなのか

「『おでんスナック』という形態にしたのは、もう、消去法ですね」

笑いながら粟戸さんは言う。

「既に若草通りでワンショットバーをやってるから、2店舗ともバーだとよくわからなくなっちゃうと思って。『きょうちゃん』では飲み放題のスタイルをわかりやすくするために『スナック』と名付けました。あとは話題性というか、男がスナックって面白いよなって感じて。おでんを出そうと思ったのも、ピンと来たからなんです。ただのスナックじゃ絶対に頭一つ抜け出せない気がしました」

とはいえ、カウンターに据えられているのは本格的なおでん鍋だ。おでんの具材は、レギュラーのダイコン、たまご、ちくわ、こんにゃく、手羽元の5種類。日替わりのメニューもある。おでんのこだわりを尋ねると、粟戸マスターがこう教えてくれた。

「試作はたくさん重ねましたね。でも結局今は、塩だけで味付けをしています。水割りでも、お湯割りでも、どんな焼酎の邪魔もしないことが大事」(粟戸さん)

帰ってきて気づいた、宮崎本格焼酎の魅力

実は粟戸さん、宮崎に帰ってくるまで一口も焼酎を飲んだことがなかったのだそう。知人の勧めで少しずつ飲むようになるにつれ、「こんなにいいスピリッツが地元にあったんだ」と再確認したという。

店で提供する酒は、現在35種類と充実したラインナップ。日南をメインに蔵元をめぐり、自らの手で仕入れた地場のものばかりだ。粟戸さんと永易さんに、それぞれおすすめの一本を教えてもらった。

「(粟戸さん)僕は「Colorful」ですかね。これを作っている松露酒造さんは、カクテルイベントでもお世話になっていて、焼酎ベースカクテルなどもいい。フルーティーで飲みやすいですよ」

「(永易さん)芋じゃなくて麦焼酎なんですけど、僕が一番美味しいと思っているものがあって。黒木本店さんの『中中』です。香ばしくて、とってもまろやか。僕はまだまだ焼酎勉強中なのですが、そんな僕もおすすめの一本です!」

ギャルが本格焼酎を飲む店に

店は2021年3月13日の、粟戸さんの誕生日にオープン。この記事を掲載した2021年4月時点では、まだ店はオープンしたばかりであるため、二人は新規客を増やしていきたいと話す。ちなみにターゲットは「ギャルです!」とのこと。粟戸さんは「ギャルが本格焼酎を飲む店にしたい。もっといろんな世代の人に焼酎の魅力を伝えていきたい」と意気込む。

ギャルがターゲットであることを知り、だから店内がピンクに染められていたのかと、筆者自身も改めて納得してしまう。しかし、さらに粟戸さんの話を聞いていくと、どうやら“ギャル受け”が理由でもないらしい。

「店内をピンクにしたのは僕の直感なんです。でも参考にしたお店はありますよ。昔西麻布で働いていた時に流行っていたワインバーが、店内が真っ赤で、入るだけでめちゃめちゃテンションが上がるんです。だからここもピンクにしてみました」

カウンターや棚、壁などは、全て自分たちの手で一から塗って仕上げたという。非常にファンシーな店内は、確かにどんな人のテンションも上げられそうなパワーを感じる。粟戸さんのひらめきと直感、そして信じて付いていく永易さん。2人の強固な信頼関係を伺うことができるエピソードである。

「おでんスナック きょうちゃん」の未来について、粟戸さんはさらにこう続ける。

「スナックと言っても、酒のラインナップにはこだわっているので、ここがバーとスナックの中間の気持ちよさを感じられる場所になれば嬉しいです」

永易さんも、「ここをみんなのホームにしたいんです。お客さん同士、みんなが知り合いみたいな感じ。もう一度来たいと思ってもらえるような店作りをしていきたいですね」と笑顔で、照れながら語ってくれた。

一度来たら忘れられないピンク色の店内で、こだわりの本格焼酎と、シンプルな味付けのおでんをぜひ楽しんで欲しい。ここが、紳士な2人のマスターがニシタチで生み出した、令和のスナックなのである。

取材・執筆=いちたになな、撮影=田村昌士

看板 (5)

Data

粟戸稜大、永易恭之介

粟戸稜大:中学・高校時代を宮崎で過ごし、上京。市内の「BAR AWATO」のオーナーも務める。
永易恭之介:宮崎県出身。学生時代は硬式テニスに打ち込む。現在焼酎を絶賛勉強中。

住所
宮崎県宮崎市千草町1-2 
ABC90ビル4F
電話
080-1765-9524
営業時間
21:00~翌5時
定休日
火曜日
喫煙
ok
席数
カウンター=6席、ボックス12席。
料金体系
2時間=3,000円。一部の焼酎は追加料金500円〜。ボトルキープは3,000円〜。
軽食
あり。飲み放題におでん・たこ焼き食べ放題を含む。
決済方法
現金、クレジットカード
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